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column #4 「希望という名の豊かさ」 |
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ある朝、交差点で少し乱暴な車が、スピードを落とさずに急な右折をした。その車は、小学生の集団登校の先導さんの直前をすり抜けた。
そこに居合わせた散歩中の私は一瞬ヒヤッとしたが、幸い事故にならなかったのでほっと胸をなでおろした。何とも困ったドライバーではあったが、同時に自分もいましめた。
10人ちかくの子供たちが横断歩道を渡り終えるのをぼんやりながめているうちに、少しずつ怒りはおさまり、無事でよかったという気持ちで気分が何となく明るくなった。すると先頭の上級生さんが最後尾の子にかけよって何やら声をかけ、横断歩道を戻ってきた。
どうしたのかと思ってながめていると、その子は歩道の近くに倒れている自転車を起こして、次に私に「おはようございます。」と大きな声であいさつし、また横断歩道を渡りかけ足で集団にもどっていった。
子供達がいろいろな事件を起こしたり、また事件に巻き込まれたりして暗い話題が多い昨今であるが、このことは私にとって「今のニッポン、まだまだ捨てたもんじゃないヨッ」とあっちこっちで話してみたい気持ちにさせられたでき事であった。
乱暴なドライバーは言語道断であるが、そんな時とっさに上級生が下級生を守り、そしてあるべき姿を下級生に示したことに私は希望を持つことができた。この希望は物の豊かさなどとはちがい、将来彼等によってこの町がいい地域に確実になっていくであろう「心の豊かさ」のようなものを感じ、とてもすがすがしい朝であった。 |
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